【ネタバレ】アントマン&ワスプ:クワントマニア、みてきたよ

アントマンシリーズは最高、だからこその消化不良

とタイトルをはじめてしまったが、まずこのアントマン&ワスプというタイトルがめちゃくちゃいい、といいわせて欲しい。私はアントマンの師匠でもあり、恋人でもあり、ピンチの時には必ず駆けつけるワスプの大ファンなのだ。サブキャラではなくしっかり主人公感が出てくるタイトルに拍手を送りたい。

本作はアントマンシリーズ3作目。MCUシリーズはドラマも含めて全て履修済みだが、その中でもアントマンシリーズはコミカルな笑いとワクワクするアクションと展開を見せてくれるのでお気に入りのシリーズでもある。絵本の「かばんうりのガラゴ」(かばんがひらがななのがとてもいい)や、ジブリの「借り暮らしのアリエッティ」が好きな人はおそらくアントマンシリーズをとても気にいるはず。

話を戻そう。前作の2作は、元窃盗犯のスコットが元獄中仲間やアリたちと協力しながらスーパーヒーローとして活躍しながら悪と戦う物語だ。

本作は3作目だが、ルイスをはじめとした元窃盗仲間(現警備会社職員たち)は一切出てこない。私を含め、彼らのファンにとっては悲しいだろう。テーマは家族。前回からコミカルさは半減し、ホープ一家とスコット親子がひとつの家族として(キャシーはハンクのことをGrandpaと呼んでいた)の交流を深めるハートフルストーリーだ。

2作目ではナウシカの世界のような量子世界が広がっているイメージを視聴者に植え付けたが、本作ではそれはあくまで一部分にすぎず、人間や宇宙人のような生き物が生息し、都市が形成されていたのだ。まるでルーカスフィルムの宇宙映画のよう。ついでに量子世界に連れてっちゃったアリが数千年の時をかけて文明を築いたシーンは、藤子・F・不二雄作品の名作である犬猫劇場作品を思い浮かべる。

だらだらと書き連ねてしまったが、感想をまとめると、本作はなんだか物足りなく、アントマンらしさが少ないと感じる作品だった。自らが小さくなったり大きくなったり、周囲のものの大きさを自由自在に変えることができるバトルシーンが魅力的だが、今回はサイズを生かした先頭より実物大の肉弾戦が多く、一般的なヒーロー映画と変わらないアクションが続いたことが残念だった。ファンだからこそアントマンらしさ、を自分の中で作り上げて勝手に求めすぎたのかもしれない。でもやっぱりルイスが恋しいよ...

何に一番消化不良か?

アントマンの戦闘、ではなく、今作ではレジスタンスをアッセンブルして打倒カーンの流れをわずか2時間でやってしまったところだ。感情移入にじっくり時間をかけたいタイプの人間なので、初登場の味方が初登場の敵を倒しに集まるストーリーにいまいちのめり込めなかったのだ。これまでシリーズものの映画で1.孤高な主人公が味方と出会う、2.レジスタンスを形成or加わる、3.ラスボス倒すのストーリーを体験してきた私にとっては、展開が早かった。レジスタンスはおらず(圧倒的支配者がいる中、レジスタンスがいないのは考えにくいが)、アリだけで倒す方がまだ消化不良にならなかったかもしれない。

それでも好きなところ

消化不良、といいつつもそれでも好きなシーンは多い。ピンチの際にアリが助けに来てくれるシーンや、アリを引き連れて真のラスボスの如くカーンの前に立ちはだかるハンク。スーツのないハンクとジャネットの生身の戦闘能力の高さも垣間見れたのもよかった。これまでの主要キャラクターの見所をしっかりと作り、家族が誰一人命を落とさず帰還するところも素晴らしい。近年のMCUは大事な人を失う展開が多かったので、最後まで安心してみることができた。

奴は四天王の中でも最弱...

ヴィランの話をしよう。今回のヴィランは2作と違って数々の宇宙を滅ぼしてきた征服者カーンだ(以降「征服者」)。体のサイズを自在に変化できるが武器は拳ひとつのアントマンに対してオーバースペックに見える「征服者」。手からビーム出せる時点でアイアンマン以上の強さだ。しかし、どのような能力を持っているのかロキ最終話や劇中でも十分に明かされないまま無事(?)退場した彼であった。「在り続けるもの」は全ての時の全ての事象を把握している能力があったが、「征服者」にはどうやらその能力はなさそうだ。

ポストクレジットシーンから分かる通り、強そうな変異体たちが集会を開いている。宇宙を破壊してきたはずの「征服者」が、実は弱い扱いを受けていることから、あんだけ苦労したのにまだ上がいんのかよ...ドラゴンボールでいえば、ヤムチャ超えてフリーザ超えてセル、のような印象である。神聖時間軸を作り上げて変異体から時間軸を守り続けてきた「在り続けるもの」がいかに平和な存在かが分かる。私はてっきり「在り続けるもの」が「征服者」を量子世界に閉じ込めたのかと思ったが、他の変異体たちであったことがわかる。

ヴィランあるあるだが、彼らには必ず成し遂げたい目的がある。「征服者」は「時の終わり」を防ぐために、宇宙を破壊してきたわけだ。「時の終わり」って何...そのうち私は考えるのをやめた。

 

よくわからんよ、マルチバース

考えるたびによくわからんくなるが、MCUのフェーズ4以降は神聖時間軸やマルチバースの単語はぜひ理解しておきたいものだ。最後に整理してみよう。まず、マルチバース=複数時間軸であり、もし〇〇だったら?の可能性の数だけ存在する。天才科学者のカーンが31世紀にマルチバースとの扉を見つけた時点でマルチバースは元々あることがわかる。エンシェント・ワンもドクターストレンジ1でマルチバースのセリフを示唆している。ストレンジもカーンもあくまでマルチバースとの扉の開閉をしただけだ。変異体は、マルチバースにおける各宇宙に存在する「もう一人の自分」のことだ。ただ一人、アメリカ・チャベスを除いて。